ジユウメモメモ

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香港が舞台のもう一つのアウトレイジ。ジョニー・トー「エレクション 黒社会 / 死の報復」

もう一つの「全員悪人」。

 好きな映画監督ジョニー・トーのヤクザ映画「エレクション」の2作をやっと借りられた。予感していた通り、これはジョニー・トーが描くもう一つの「アウトレイジ」。”全員悪人”の物語だ。

「エレクション 黒社会」

 2年毎に行われる香港最大のマフィア組織「和連勝会」の会長選挙。会長の座を巡り、組織の伝統を重んじ冷静なロクと、金にものを言わせる実力主義のディーの二人が激突。ロクが幹部達の支持を得て会長に選出されるが、会長となった者に渡される「竜頭棍」がロクに渡るのを妨害するディー。竜頭棍を巡り賄賂が飛び交い裏切りが重なる・・・。

 「アウトレイジ ビヨンド」を観て間もないのもあってとても面白い。裏切りが連鎖する様が似ているけれど、印象的なのが、「エレクション 黒社会」では銃声がしないこと。同じマフィアでも手にするのは銃ではなく、棒や刀で邪魔者を排除していく。より直接的な武器で、よりドス黒い世界を見せつけてくる。そして、温厚に見えるサイモン・ヤムが権力を手にしてから見せる本性。「大人しそうに見える人の方が本当は怖い」というのを描いた映画にも見える(笑)。そしてこれは続く「死の報復」でも繰り返される。

「エレクション 死の報復」

 「黒社会」のラストでロクが会長に就任してから2年が経ち、会長選挙のときがやってきた。権力を手放すのが惜しいロクは掟では認められていない再任を狙うが、2年前に会長の座を約束していたジミーが立ちはだかる・・・。

「黒社会」が「アウトレイジ」なら「死の報復」も「ビヨンド」に重なって見える。続編ではマフィアが土地開発に乗り出していて、中国の本土での合法的なビジネスの拡大に乗り出そうとしたジミーに、ビジネスを認める代わりに「和連勝会会長の就任」の条件を提示するのが警察。マフィアの内紛を利用して治安の維持を図ろうとするゲームプレーヤーの役目も同じだ。違いは、「ビヨンド」のバイオレンス描写が前作に比べてマイルドになったのに比べ、「エレクション」では続編の方が迫力を増している点。「黒社会」でも真面目な人間に見えたジミーが足を洗いたいがために会長の座を狙うようになってからの行動は、ロク以上に恐ろしい。中盤からはロクにもジミーにも感情移入ができなくなる。彼らは皆悪人なのだ。

好きな映画監督二人が描く2つの謀略の物語。もしも「次」があるなら観たいのも同じ。「エレクション」の3作目があるなら今度はニック・チョンが主人公だろうか?ジョニー・トーの映画を観てまだハズレを引いてない。

この作品では旧体制も残る過渡期の黒社会を描きました

私たちが変化の全貌を探ろうとしても

そのすべてを知ることは不可能です

私に描けるのは”黒社会の決断”で”結末”は描けないのです

ジョニー・トー 「エレクション 死の報復」特典映像より