
生放送で描かれる衝撃の90分。「FAIL SAFE 未知への飛行」
モノクロでも見る価値有り。衝撃のテレビ映画
※Hulu、Netflix、Amazonプライム・ビデオなどの動画配信サービスでは、コンテンツ配信スケジュール、コンテンツホルダーとの契約により、視聴可能なタイトルが変化するため、記事内で紹介しているタイトルの取り扱いが休止、配信終了となっている可能性があります。
Huluで凄い映画を見た。「FAIL SAFE(フェイルセーフ) 未知への飛行」。同名の古い映画があって、ずっと気になっていたタイトルだけど、写真はジョージ・クルーニー。2000年に”生放送”されたテレビ映画でリメイク作品だ。前情報が無い状態で観たら、言葉を失う結末。考えさせられる映画は大好きだけど、この作品のインパクトは1位、2位を争うかもしれない。

徹底された危機管理が危機を招くとき
”フェイルセーフ”とは”事故が起きることを前提にして事前の策を何重にも用意しておく考え方。この映画の中では、爆撃機への大統領命令は音声ではなく(敵の偽装の可能性を排除するため)、信号によってのみされることになっている。
物語は冷戦下のアメリカ空軍司令部が舞台で、一人の議員と、軍にシステムを提供した企業の幹部が航空管制室を視察に来ているところから始まる。
軍は常に爆撃機と戦闘機を上空に配置し、未確認の飛行物体を見つけた際は、確認がとれるまでは敵機とみなし、攻撃を受けた際に即報復できるよう爆撃機を帰還可能空域(フェイルセーフゾーン)で待機させることとなっていた。この日も未確認飛行物体が見つかり、警戒態勢がとられたが、その後航路を外れた民間航空機と判明し、警戒は解除された。しかし、フェイルセーフゾーンにいた爆撃機は「モスクワを爆撃せよ」という大統領命令を受信していた。
モニターに映る爆撃機の編隊がモスクワへ向かい騒然とする司令部。命令は機械の故障による誤送信で、爆撃機パイロットとの通信を試みようとするがソ連の妨害電波に遮られてしまう。大統領は戦争を回避するため、爆撃機の撃墜を戦闘機パイロットに命ずるが撃墜に失敗し、燃料の尽きた戦闘機は墜落してしまう。ソ連書記長とホットラインで撃墜のため協力し合あい、爆撃機パイロットとの会話も成功するが、「音声は敵国の偽装の可能性があるため無視せよ」と命令されていたパイロットは大統領の中止命令を拒否。最後に残った1機の爆撃機がモスクワへ到達する見込みとなる。大統領は戦争を回避するため、書記長にある提案を申し出る・・・。というお話。
「君たちが”引き金”か」
「心配はごもっとも。誰かが暴走したら世界は滅ぶと。
二重安全(フェイルセーフ)手順があります。人に頼らずに。」「それが一番恐ろしいよ」
「人為的ミスの回避という意味です。どんな優秀な者でもミスはします。
疲れたり怒ったりしてね。それを補うのがナップ氏のシステム。」「失敗なしです。」
未見の人は衝撃を受けたらいいと思うのでネタバレは書かないけれど、最後に大統領が書記長に提案する”誠意”の内容に絶句した。世界を何度も滅ぼせるだけの核兵器を持った国に背負わされる覚悟の大きさがこれほどのものとは。危機の回避が絶望視されたときに、為政者が取れる精一杯の誠意がどんなに残酷なものになるのか。「なんて酷いことを!」と言うのは簡単だけど、彼の提案以外に取れる手はあるのかというと難しい。大統領は大国を相手に確かに精一杯の誠意を見せたのかもしれない。背負うには重すぎる十字架を背負って。無音のスタッフロールが胸騒ぎに追い打ちをかけてくる。
後で、生放送なのに俳優陣(リチャード・ドレイファス、ドン・チードル、ハーベイ・カイテル、ノア・ワイリーと大物有名俳優が勢揃い!)の演技が自然で凄いな、とか、BGMがほとんど無かったことに気付いてハッとする(スリルは音楽無しでも生み出せるのか!)けれど、そんなことはどうでもよくなるくらい集中して見ることができた。定期的に見たい重い映画がまた増えた。見応えあり。
シドニー・ルメット監督、ヘンリー・フォンダ出演のオリジナル版はこちら。リメイク版に劣らず不気味な余韻。
[applink id=”488437854″ title=”未知への飛行 – フェイル・セイフ – (字幕版)”]