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不運なスピンオフか「ボーン・レガシー」

なんだか変?な「ジェイソン・ボーン」シリーズ新章

 ※Hulu、Netflix、Amazonプライム・ビデオなどの動画配信サービスでは、コンテンツ配信スケジュール、コンテンツホルダーとの契約により、視聴可能なタイトルが変化するため、記事内で紹介しているタイトルの取り扱いが休止、配信終了となっている可能性があります。

 Huluに気になってた未見の映画「ボーン・レガシー」が追加されてたので見てみた。

 「ボーン・レガシー」はマット・デイモンのスパイ映画「ジェイソン・ボーン」シリーズの4作目。前作までの主人公ジェイソン・ボーンの ”記憶を失った暗殺者の自分探しと贖罪の物語”は、3作目の「ボーン・アルティメイタム」できれいに完結したはず。

…なのだが、スタジオ側としては儲かるシリーズだから続けたい。そこで計画される続編企画。だけど途中で監督のポール・グリーングラスが離脱して、彼が撮らないならと主役のマット・デイモンまでプロジェクトを離脱。それでも諦めないスタジオが、ならばと主人公をボーンではない別の暗殺者にして、「あのとき、別の場所では・・・」なサイドストーリーとして作ったのが「レガシー」。監督はシリーズの脚本家トニー・ギルロイが引き継いだ。

マット・デイモンは出てこないけれど、周辺の主要キャラクターは顔を見せ、タイムラインを共有し、「アルティメイタム」後の展開を示唆する物語。アイデアとしては面白い。が、大人の事情で先の見えない不確定な要素を含んだまま製作されたために、弱い映画になってしまっている。

主人公に戦う理由がない!?

 「ボーン・レガシー」に登場する新たな主人公は、アーロン・クロス(ジェレミー・レナー)。彼もまたジェイソン・ボーンのようにCIAに作られた暗殺者。常人を超える戦闘能力と知力を有するが、それを維持するために、緑と青の錠剤を定期的に服用し続けなければならない。アーロンは手元の薬を無くしてしまい、薬を手に入れるために連絡員のいる山小屋目指して雪山を走っていた。

 その頃、内部調査局のパメラ・ランディ(ジョアン・アレン)によって、ボーンを産んだ暗殺者養成プロジェクト”トレッドストーン / ブラックブライアー”計画を告発されようとしていたCIAは、別の極秘プロジェクト”アウトカム”(エドワード・ノートンがプロジェクトリーダー役)にも調査の手が及ぶのを恐れ、プロジェクトを停止、薬によって強化された工作員を次々に暗殺し、計画の隠蔽を図る。アーロンも山小屋にいたところをミサイルで攻撃されるが回避、死を偽装しアメリカへと戻る。

 アウトカム計画に関与していた製薬会社の関係者も命を狙われ、唯一の生存者マルタ(レイチェル・ワイズ)は、自宅を訪れたCIA工作員(正体がわかるまでのやりとりが長すぎる)に襲われるが、駆けつけたアーロンに救われる。

と、テキストでストーリーを説明すると長くなるのだけど、問題はその後。

薬を無くして飲めていないジェレミー・レナーはレイチェル・ワイズに「薬はどこだ!」と必死に問い詰める。緑の錠剤(身体能力をブーストする)は実は、彼の知らない間に同じ効果を発揮する”活性ウイルス”が投与され、飲む必要がなくなっていることが明かされる。青の錠剤(知力をブーストする)も理論的には別の活性ウイルスを投与すれば薬を飲み続ける必要がなくなるのだという。そのウイルスはアメリカにはなくフィリピンにあるのだと告げられる。なるほど…。

この映画、主人公に敵と戦う動機が無いのだ。最初からずっと「薬飲まなきゃ!」がモチベーションになっている。どうも軍に入隊したときにIQをごまかしていて、それを薬で知能指数を上げていたから、薬をやめるとバカに戻ってしまうのが怖いらしい。知らんがな!

エドワード・ノートン演じる上司と考え方の対立があったことは示唆されるけど、ボーンみたいに恋人を殺された、とか(ミサイルで命を狙われたことがあったとは言え)明確な反抗の理由も意志もハッキリと見えない。レイチェル・ワイズを失えば、薬を手に入れられなくなるから守っているだけにも見える。それにそもそも薬を飲むことだけで強化されちゃう、という設定も近未来SFっぽさが出ちゃってリアル路線の過去作からちょっとはみ出てる印象が拭えない(「リミットレス」みたいな話だったの!?)。

ジェレミー・レナーのアクションシーンはカッコいい。「ミッション・インポッシブル:ゴースト・プロトコル」の格闘シーンが少なくて物足りなかった人は満足できる。だけど、それもヘンテコなシーンが一つと、オチにも問題がある。

中盤、マルタの家で、アーロンがマルタに時計を渡し、「何秒後かに音を出して敵を引きつけて」と告げ、自分は壁に隠れる。音がして敵が階段を登ってきたところをタイミングを合わせて壁を撃ってやっつけるのだけど、やめてよその”地味な生活感”!「ラスト・アサシン」の毒入りワインをみんなに飲ませちゃった!「96時間レクイエム」の娘に下剤を飲ませてトイレで再開、みたいな!賢いのかそうでないのかよくわからない。

ラスト、CIAが送り込んできた”トレッドストーン””アウトカム”を超えた”ラークス”プロジェクトの暗殺者に2人が追われるのだけど、最強の暗殺者2人が対峙・・・それはもう格闘シーンを期待しちゃうってもの。がしかし、2人は拳を交えることなくバイクで追いかけっこ。挙句の果てにヒロインにバイクを蹴られて派手に吹っ飛んで死ぬ。「アイアンマン3」で見たやつ!

その後、計画を告発したパメラが窮地に陥るところが描かれるのだけど、”トレッドストーン”とアーロンは関係がない(予告は嘘字幕!)ために単体の映画として見ると、不要なシーンとなってしまっている。本来ならば、エンディングでアーロンに「ジェイソン・ボーンを探し出す」って言わせたかったのだろうし、言わせてたらシリーズの一部足る作品になっていた。大人の事情(当時はマット・デイモンとポール・グリーングラスがシリーズに復帰する可能性はあれど確定はしていなかった)が邪魔をしたのは不運としかいいようがない。後々の展開に制約をかけないためには、互いに干渉しないことが保険をかける手段だったのだ。

「ボーン・レガシー」にも光るところはあるが続編は…?

 それでも「おお!」と思えたシーンはあった。フィリピンのチェイスシーンはボーンっぽさがあったし、それまでのモヤモヤを一瞬忘れられる。好きなシーンは2つ。

  • マルタの家の地下室から出てきたアーロンが、屋根に上って窓から再侵入するところをカメラが追っていくところ
  • フィリピンの住宅街で警官に挟まれたマルタ、彼女を追っていたアーロンが屋根から降りてくるのをカメラが一緒に落ちてくるところ

カメラが役者と一緒に浮いたり落ちたりするのは見ていて気持ちがいい。

アクションだけを見ていれば目を惹くカットもある。それでもやはり過去作を見ていないとポカーン、見ていてもモヤモヤ。「レガシー」の続編も予定はされていたが延期している間にマット・デイモンとポール・グリーングラスが戻ってきてしまった。スタジオがじっとしていられなかったがために、誰も幸せになってない・・・。

追記:しばらく「レガシー」続編の情報が途絶えていたが、2017年8月の時点でもまだ保留状態の様子。ジェレミー・レナーも、監督に決まっていたジャスティン・リンも「自分としては是非やりたい」が、スタジオ側の動きは無いようだ。

SCREEN RANT:Justin Lin Offers Update On Jeremy Renner Bourne Sequel

SCREEN RANT:Jeremy Renner Is Still Game For Bourne Legacy Sequel

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カテゴリ: アクション/アドベンチャー

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