ジユウメモメモ

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みゆき座

5年ぶりの新作はマイケル・マン復活の狼煙か「ブラックハット」

マイケル・マンが描く現代の脅威

 マイケル・マン監督の「ブラックハット」をTOHOシネマズみゆき座にて鑑賞。5年ぶりの新作。アメリカでは「アメリカン・スナイパー」と公開時期が重なったためかヒットとはならなかったようだけど、美しい映像、リアルな銃撃戦と耳をつんざく銃声。いざ観てみればしっかりマイケル・マンの映画だった。

みゆき座
アメリカでの惨敗のせいか上映館数の少ない「ブラックハット」。有楽町のみゆき座で鑑賞。

映画に出てくる技術は実在する

 香港の原子力発電所が突然爆発。それはハッカーによる遠隔操作で冷却システムが破壊され、原子力格納容器に亀裂が入ったために引き起こされたテロだった。ハッカーは同時にアメリカの原発も狙っていたことから中国・アメリカ合同の捜査チームが結成され、収監中だった天才ハッカーのハサウェイ(クリス・ヘムズワース)は事件解決時の釈放を条件に捜査の協力を求められる。ハッカーがテロに利用していたプログラムは、かつてハサウェイが作ったコードを元に作られていた・・・。というお話。

 「ブラックハット」のストーリーは、アメリカとイスラエル軍がイランの核施設を攻撃するために作った「スタックスネット」(Wikipedia)に着想を得て作られた。そして今回も徹底した取材が行われ、主演俳優達は実在のハッカー達からハッキングのレクチャーを受けた。劇中に映るコードはデタラメではなく、ハッキングコンサルタントが書いたもの。描かれる手口はマルウェアやBadUSB攻撃など実在するもので、どれも「聞いたことはあるけど、実際どんなものなのか」をわかりやすく教えてくれる。添付ファイルは安易に開かない。セクシー美女がUSBメモリを持ってきたら要注意だ。

コンピューター世界の映画を75歳の監督が作って、説得力がちゃんとあるというのは凄いことだ(この手の映画にありがちなSFっぽいUI画面は出てこない。・・・ちょっとこっ恥ずかしくなるCG映像はあるけれど)。

マイケル・マンファンが観たかったマン映画。ドライなリアル。

 新作の題材はまさに現代の脅威。ストーリーそのものが興味深いのはもちろんだけど、同時に、”異国での捜査活動(「キングダム 見えざる敵」)”、”世界を股にかける展開(「マイアミ・バイス」)”、”地下鉄へ逃げ込む(「コラテラル」)”のような場面展開はファンはニヤリとするかもしれない。もしや挨拶代わりのファンサービスも兼ねた復活の狼煙なのだろうか(元々フィルモグラフィーのスパンが空く監督ではあるのだけど)。どこで一時停止してもカッコいい絵になる。

 マイケル・マンのアクション映画のリアル世界では安全な場所が無い。

「マイアミ・バイス」では車に乗ってれば安心かと思えば対戦車ライフルで撃たれるし、「ブラックハット」では「コンテナの影に隠れていても銃弾が貫通してくる」というシーンがある。カジュアルなアクション映画を見続けて「そういうものだ」と思っているところで「そんなわけないだろ」と現実の恐ろしさをサラッと見せられちゃうのは、わかっていてもやっぱり楽しい。それも目当てにもっともっと彼の映画が観たくなる(グロテスクな描写は本当は苦手なんだけど、どうも、怖いもの見たさが勝ってしまう)。

一番好きなシーンは中盤の香港、主人公たちが全力疾走で容疑者を追跡するシーン(コンテナ置き場での銃撃戦に続く)。アクション映画を名作にしたかったら主人公に(長めに)走らせるべきだ。彼らの真剣さを伝えるのに最も簡単で、最も効果的な方法だ。

胸板厚いクリス・ヘムズワースが「ハッカーに見えない」という印象は予告を見たほとんどの人がひっかかるところだろうけど、一応劇中では「父親に男手一つで育てられ、獄中ではひたすら頭脳と体を鍛えていた」と説明があった。冷静さと用意周到さも、プログラマーの思考のそれゆえだと思えば納得してあげられる(「リクルート」ではコリン・ファレルがMIT出身のハッキングが得意なCIA工作員になっていた)。

 観終わってから読んだパンフレットの一部にこうあった。

我々は「マイケル・マンの新作を大きなスクリーンで観ることができる」というこれから先に何度訪れるか分からない貴重な機会に立ち会っている。

本当にそうだ。この映画の製作にはオタク映画の後援会長トーマス・タル(レジェンダリー・ピクチャーズCEO)の名前が。この先もどうかマイケル・マンを支援して欲しい。

「ブラックハット」パンフレット
パンフレットはインタビューが充実する他、ハッカーの技術がわかりやすく解説されている。しかし、まさかの縦開きが扱いづらい…。

余談:映画はテレビに溶けていくのか

 今作も撮影はデジタルカメラを使用しているのだろうけど、映像が前の作品より滑らかに見えた。フレームレートが上がっていたのだろうか。暗いシーンでもクッキリ明るく、まるで家電量販店の新型テレビの「倍速表示」のデモを見ているよう。この先、映画はテレビドラマに近づいていくのか、その差は大画面、大音量で観られるか否かだけなのか。

また、マイケル・マンの映画を観て育ったクリストファー・ノーランがフィルム派で、マイケル・マン(今作が高フレームレートだという記事を見つけられていないが)やがジェームズ・キャメロンがビデオカメラの積極的な支持者だというのは面白い。

映画がどんどん溶けていく。自分の中の「映画の定義」がよく分からなくなってきた。

アイスマン

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脚本制作の参考にされた本とのこと。

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