ジユウメモメモ

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アメリカン・スナイパー

無音のスタッフロールに何を思う「アメリカン・スナイパー」

”伝説”と呼ばれた一人のスナイパー、父、夫

 丸の内ピカデリーでクリント・イーストウッド監督作「アメリカン・スナイパー」を鑑賞。

アメリカン・スナイパー
丸の内ピカデリーにて「アメリカン・スナイパー」を鑑賞。

「ブラックホーク・ダウン」では現代の戦争のリアルに、「キングダム」ではエンディングの一言にゾッとしたり、戦争映画の中には鑑賞後にしばらく言葉が出ないような映画があるけれど、「アメリカン・スナイパー」も間違いなくそんな映画の一つだ。

戦争で心に影響を受けない人はいない

 主人公のクリス・カイル(演じるのはプロデューサーとしても名を連ねているブラッドリー・クーパー。体重を増やして筋肉の着いた姿は彼だとわかるのに時間がかかる)は実在の元ネイビー・シールズのスナイパー。2013年に元アメリカ軍人に射殺され話題となった人物。

 テキサス生まれでカウボーイを夢見ていた彼はテレビでアメリカ大使館が爆破された事件を目にして軍への入隊を決意。9.11後イラクへ4度派遣され、類まれな狙撃の才能を発揮、現地で160人の敵を射殺した。仲間からは”伝説”と呼ばれ、敵は彼に2万ドルの懸賞金を懸けていた。

 「アメリカン・スナイパー」はクリスを通して、戦争が戦場に身を置いた軍人と、彼らの家族にどんな影響を与えるのかを見せる。戦闘が麻薬の様に兵士に取り付いていく様は「ハート・ロッカー」の狙撃手版とも言えるけど、今作では家族の方へもより時間をかけて描写される。心優しき父だった夫は戦地から帰ってくる度、心ここにあらず。夫は戦地から帰ってくる度「戦争中なのに平和にショッピングを楽しむ国民」に怒り、戦場で今なお命を落とすかもしれない仲間を助けたいがため平穏に暮らすことができない。

同じ部隊の兵士が死んだ後、彼が戦いに疲れていた様子が書かれた遺書が読み上げられるが、クリスが妻にその手紙についてどう感じたかを聞かれると、クリスは「彼は戦意を失ったから死んだのだ」と答える。つかの間の休息を家族とともに過ごしているときに、犬が子供に飛び掛ったのを見て犬を殺そうとする。観客はだんだんと彼の言動に違和感を抱く。彼はそれに気付かない。PTSDだ。この部分も「ハート・ロッカー」より兵士が”普通の人々”と関わるシーンが多いので、彼らがだんだんとズレていく様がわかりやすい。

戦友を殺した狙撃手との決着が着いて、やっと退役を決意し、心を取り戻した彼にやってきたのがあの悲劇。彼を撃った犯人もまた、戦争に心を蝕まれた元軍人。戦意高揚映画でもアメリカ万歳映画でも全然ない。エンディングのスタッフロールはアグレッシブなオーケストラの音楽でも、お涙頂戴のトランペットの曲が続くわけでもない。無言こそメッセージ。観客はその間にもぐもぐと咀嚼すればいい。

「映画にできる戦争反対表現の最たるものは、クリス・カイルのように市民生活に戻らなければならない人々やその家族に、戦争が与える影響を見せることだ。私の戦争映画『硫黄島からの手紙』でも、家族や日常から引き離される悲劇について描いた」

ニューズウィーク日本版「マイケル・ムーア「『アメリカン・スナイパー』は卑怯者」?」クリント・イーストウッドのコメント

 イーストウッド監督が「アメリカン・スナイパー」でやろうとしていたことを考えると、合わせて観たい映画は、”戦争に取り憑かれた男”を描いたキャスリン・ビグロー監督、ジェレミー・レナー主演の「ハート・ロッカー」、”退役後の兵士の社会復帰の難しさ”を描いたデヴィッド・エアー監督、クリスチャン・ベール主演の「バッドタイム」だろうか。

「休んでもいい、戦うかはお前たち次第だ」

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