「映画は完成したら永遠に残るもの」って思ってたけどそうじゃなかった。
忘れるはずのない映画を忘れ始めた…
物心ついたときに物凄く好きだったものって、大人になっても結構覚えているもので、映画が好きなら忘れることのない映画が一つや二つあるもの。それはいつでも見返すことができる。忘れることなんてない。映画はフィルムに焼き付いて、ディスクになって必ず保管される。世代を超えて語り継がれる”特別なもの”なのだと思っていた。
だけど、最近になって、…うすうす気付いていたけれど、「映画はその存在を忘れ去られ得る」のだと認めざるを得なくなった。
大好きだったはずの映画のストーリーを覚えてないのだ。見返したくても、もう見られないのだ。ひょっとするともう二度と。
あの時好きだったヒロインをまたカラーで見てみたい
2000年に公開された日本映画「スイート・スイート・ゴースト」がその映画で、主演は大地泰仁、金子統昭、中島ちあき。主題歌が小島麻由美の「ding ding(doo ron ron ron)」で映画の雰囲気と合っていたのが強烈に印象に残っている(確か石川県では見られなくて、劇場公開後にケーブルテレビの邦画専門チャンネルで見たのが最初)。
だけどお話のオチが思い出せない。覚えているのは「夏休みに転校してきたヒロインに主人公が恋するのだけど、ヒロインが消えてしまう」というぼんやりした筋書きだけ。「誰かを好きになって話がしたくなった頃にいなくなってしまう」なんてことは(きっと誰にも)ありがちな経験だから主人公に感情移入できたし、一緒にヒロインに恋してたのも、もう半透明になりつつある記憶だ。
映画であれ、ドラマであれ、デジタルの時代になったら、画質が劣化せずにいつでもどこでも見られるようになるのだと思っていたけどそうじゃなかった。DVDが出ていて廃盤になった、というなら少し高いお金を出して手に入れることができるかもしれないけれど、VHSでしかリリースされなかった映画はプレーヤーが壊れたらそこでおしまい。YouTubeに予告もアップされていなければ、もう、誰も見返すことができないのだ。
「こんな映画があった、見てみてよ。」って人に言っても見せてあげられない。そうしていつの間にか自分の頭の中からも消えていく。「スイート・スイート・ゴースト」の場合、振り返ろうと思って探せるのは数枚の写真とキャストとスタッフのテキストのリストくらい。もし、その映画を好きなのが自分だけだとしたら…自分以外にその映画を覚えているのはその映画に関わった人たちだけだろう。せっかく作られた映画を、ずっと覚えていてあげたいけれど、もう「好きだった」ということしか覚えていない。
定期的にこの映画のことを思い出すけれど、いよいよ完全に忘れそうになっていることに気付いて凄く悲しくなった。通販で中古のパンフレットを見つけて購入した(あらすじは書いてあるけどオチまでは書いてなくて、表紙以外全ページモノクロ。好きだったヒロインも白黒だ)。
書くだけタダのワンチャンス
ずっとまえに「たのみこむ」にDVD化希望!って書いた気もするけれど、TwitterもFacebookもない頃だ。
誰も覚えてないかもしれない映画を、たった一人自分のためにDVDになったりBlu-rayになったりすることはないのはわかっているけれど、映画に関わった人たちに「あの映画のファンですよ」と言いたいのと、自分もその映画を好きだったということまで忘れないようにメモしておく。
映画ファンでブログを書いてる人は「大好きだったのにもう見られない映画」があったら、どんどんネットに書き留めて欲しい。酔狂な映画会社の人の目に留まることがあるかもしれないから。