プロたちの撮影現場「アウトレイジ ビヨンド Blu-rayスペシャルエディション」
「映画の因数分解」が楽しい「アウトレイジ ビヨンド」
劇場で清々しい余韻に浸れた、繰り返して観たくなる映画「アウトレイジ ビヨンド」。楽しみにしていたブルーレイ スペシャルエディションが届いたので早速メイキングを観た。
ブルーレイなのに特典ディスクがDVDってどういうことなんだよバカヤロウ!
DVD見ても映像が綺麗だから、フルHDの素材がありそうなんだけど・・・。それでも北野映画のメイキング映像は北野映画ファンの自分には楽しい内容だった。
特典ディスクの内容はメイキング「OUTRAGE “FURTHER” BEYOND」が1時間ちょっと、キャストインタビューが陣営毎に10分ちょっとずつ、イベントダイジェストが20分ちょっと、ベネチア国際映画祭での様子が5分ちょっと。と「悪人からまなぶ劇場マナー養成講座」。
メイキング「OUTRAGE “FURTHER” BEYOND」
「アウトレイジ ビヨンド」はほぼストーリーの流れに沿って撮影されたようで、脚本とカットのレイアウトは、俳優の演技やその場で思いついたアイデアによって変更されていったらしい。特に刑事の片岡を演じる小日向文世にはストーリーを小出しに伝えていたようで、「片岡は大友を裏切るんですかね?」なんて監督に質問して北野監督に「もっと悪くなるよ(笑)」と言われるシーンが収録されていた。
その他のシーンでは、出頭してきたチンピラを聴取する場面で片岡の部下・繁田を演じる松重豊が灰皿でチンピラの頭をはたいて笑わせるシーンがあるけれど、当初はその繁田の行動は脚本に無かったらしい。現場で小日向文世から「監督は松重さんに灰皿で叩かせようと考えてるらしいよ」と伝えられ松重豊が絶句していたのが面白かった。
みんな先輩たちが緊張してるのもわかるんですよ。小日向さんとか。
それがもう、どんどん移ってくるというか。
けど、多分心地よい緊張だと思うんですけどね田中哲司
撮影現場での北野監督は常に一定のテンションで、「良かったよ!」とか「ダメだ!」みたいなリアクションはほとんど無く、「じゃ、終わりで。」なんて調子で撮影が終わったりする。カットの後の監督のリアクションが薄いから、そんな撮影現場でキャストは皆「緊張した」「疲れた」と口を揃える。撮影中のシーンでは苦笑いを浮かべながら、撮影後の作品を振り返りながらのインタビューでは皆嬉しそうな顔で「恋愛要素が無いこと」「情の無さ」「男たちがみな孤独」な世界を「かっこいいんですよ」「好きなんですよ」と語る。キャスト全員が「アウトレイジ」の世界に惚れ込んでいるのだ。そしてその世界にいられたことを幸せに感じてる。監督もキャストもみんな楽しんで映画を作ってる様子が印象的。
メイキングの終わりにキャストの皆が”なぜ「アウトレイジ ビヨンド」を観終わった時に清々しさが残るのか”について語っていて、皆「死と隣り合わせの世界に身を置いている男たちは皆どこかスッキリしている」「現代にはいなくなった頼れる大人たちなのだ」といったことを語っている。
僕はね、人生というのは夢と幻想が消えていくプロセス、だと思うんですよ
そういう人生の、夢と幻想が大概持って歩いてきてるんですけど、そのいくつかはこう、
達成したと思ったら消えていく。また、幻想のまんまで終わっちゃう。
だけど、ほんとの大人というのは、やっぱりその、夢と幻想が消えていくってことがはっきりわかってて、わかっていながらもそれを努力して、なんか、歩いてる。我慢してでも歩いていくし、自分のその幻想でも、夢でも達成しようと思ってずっと歩き続けてるみたいな奴が大人だと。と思ってます。神山繁
初めて北野監督の撮影現場の映像をじっくり見られたけど、繰り返して観たくなる。北野映画のファンである自覚がある人は特典ディスクの付いたパッケージを買っておいたほうが後で後悔しないかも。逃せば多分プレミア価格が付いてしまう(自分も「アウトレイジ」の特典ディスク付きブルーレイを今になって欲しくなって、プレミアな値段を見て後悔してる)。
「アウトレイジ ビヨンド」を映画館で観たときは「これで完結でいいな」と思っていたけれど、今、タイトルの「アウトレイジ ビヨンド」のBlu-rayのジャケットを見て「ビヨンド」の文字が小さいことに改めて気付くと、「仁義なき戦い」みたいにもう少し続きが観たい気になった。「ヤクザ映画の歴史の新たな1ページになると思う」ならもう1作あってもいいんじゃないかな。