
iPhoneと1000円ちょっとのヘッドセットでVRを体験してみた
PS VR発売で本当のVR元年到来?iPhoneだけでもVRを体験してみたい!
昨年あたりからOculus Rift(オキュラスリフト)、HTC Vive、Galaxy Gear VRとVRコンテンツを本格的に楽しめるヘッドセット(3Dメガネ、VRメガネ、VRグラスとも呼ばれる)が盛り上がっていたけれど、今年のPlayStation VR(PS VR)の発売でより一般的なものになりそうな予感。
しかし、Oculus Riftは高価なGPUを搭載したPCが必要になるし、PS VRはそれ自体が約5万円で、もちろんPS4本体が必要でどちらを選んでも初期投資が結構かかる。Gear VRは1万円台前半と手頃だけど、サムスンのスマートフォンを持っていないと使えない。
iPhoneユーザーだけどVRを体験してみたい!というときに、知名度があり真っ先に候補になるのはGoogleのCardboard(カードボード)。iPhone、Androidのスマートフォンを挟んで使うゴーグル(ビューア)で、Googleが設計図を公開しているため、サードパーティーから互換製品が多数販売されている。
段ボールのCardboardだけじゃない!樹脂製ボディ、ヘッドバンド付きヘッドセットも1,000円ちょっとで手に入る
オリジナルのCardboardはダンボール製で、それゆえ誰でも安くVRを体験できるのだけど、顔に付けて使うものなので使用回数を重ねるうちに皮脂がついて汚れが目立つのでは?と気になってしまう。
そこで、Amazonでサードパーティーのヘッドセットを見てみると、樹脂製のしっかりとした作りの本体、手元が自由になるヘッドバンド付きで1,000円台から購入できるものが多数並んでいた(ほとんどが中国製の製品と思われる)。そうとわかれば段ボールのゴーグルを選ぶ理由はない。というわけでその中から「VR BOX」なるヘッドセットを購入してみた。

販売元の名前は複数あるけれど開発元は不明の「VR BOX」。多分中国製。
T-product(ティープロダクト) VR BOX 3D VRメガネ ゴーグル スマホ 3D映像体験 バーチャル リアリティ (...
Amazonには↑と同じ商品が異なる販売元から多数出品されています。価格も異なる他、Bluetoothリモコン付きなどのセット商品もあります(関連商品のところに並んでいます)。
メーカー不詳の「VR BOX」。決め手はバネで挟む、カートリッジ式スマホホルダー(吸盤でスマホを固定するタイプもあったがスマホ本体の形状やスマホケースの素材や形でうまく固定されないのでは?と心配になった)、イヤホンコードを外に出せるデザイン、AR用スライドカバーまで用意されているのに関心したところ(「なるほど!」とは思ったけれど”VRモード付きセカイカメラ的なアプリ”が存在するのかは知らない…)。

2画面表示ARアプリが登場するまで使い所がないけれどアイデアとしては面白いスライドカバー(スマホのカメラの同時利用を想定している)。
Amazonにはブランドの異なる同じデザインの商品が多数あり、どれが本家なのかわからず選んだけれど、届いた商品は外箱に多少の汚れ、製品本体にもよく見たらスクラッチ傷、説明書は英語と中国語表記、レンズ内に細かなゴミも見えるなど、値段なりの品質。でも値段を考えると目を瞑れる(レンズに深いキズが入っていたりするとさすがにギラついて目立つので返品や交換の交渉をすべきだと思うが2,000円台のものを選んでも似たようなものでは…と思う)。

同梱物は英語と中国語の簡単な説明書とスマートフォン固定用の小さなゴムパッドのみ。
仮に傷一つなく、丁寧な梱包と、きれいな日本語のマニュアルが付いたところで3,000円、5,000円するようになったら手は伸ばさないかもしれない。極端に言えばただの固定具だ。この手のヘッドセットの画質や画面の追随性といった性能の評価軸は全てスマートフォン本体に委ねられる。

カートリッジ式のスマートフォンホルダーを取り外せるようになっている。

スマホをケースを付けずに裸で使っている場合は傷防止のためにゴムパッドを付けたほうがいいかも。

スマホ固定用のバネはちょっと固めだけどそのために頭を振っても簡単には外れない。

スマホを固定した後もボリュームトリガーを除いて操作は可能。

VR対応アプリなど、左右の目に合わせた2画面表示になったら本体にカートリッジを戻す。

iPhone 6sにガラスフィルムとSpigenのケースを付けたままでもVR BOX本体に収納できたけれど、厚みのあるスマホやケースを使っているときは注意が必要。

ゴーグル周辺の顔に当たる部分は合成皮革なのでウェットティッシュなどで簡単に汚れを拭き取れる。

人によって目のピントの合い方が異なるので左右それぞれ独立して前後にレンズの位置を調整できる。自分の場合は両方とも前へ、外側へ移動させるとちょうどよかった。
そもそもの商品の値段が安いから、視界が覆われるわけではないし、四隅は多少画像が流れるけれど、それでも頭を動かすと視界がちゃんと動くのは「おお~!」となる。ストリートビュー、YouTubeを見ているだけでも楽しめる。

GoogleのストリートビューやYouTubeアプリなどのVR対応コンテンツはCardboardのアイコンをタップすると2画面表示になる。
App StoreにはCardboard利用を想定したVRゲームがいくつもある(VR対応アプリにはCardboardのアイコンがあるものが多いので見分けがつく)。iPhoneをヘッドセットに固定して、
手元に何も持たないで一体どうやって遊ぶのだ?と気になったけど、「画面上にある照準を頭を動かしてターゲットに合わせる」だけで遊べるタイトルもある。シンプルだけどよくできている。

視線移動だけで宇宙でのドッグファイトを楽しめるゲーム「VR Space:The Last Mission」
ただ、実写映像を見ると、画面のドットが少し気になる。通常使用時にはドットが視認できないRetinaディスプレイを売りにしてきたiPhoneも、レンズを通して目の前に画面を持ってきてしまってはドットを消すことはできない。ちょっと離れた位置にいる俳優の表情はピントが合っていてもぼやけたままだ。それとやはり多少は目に負担がかかるのか長時間映像を見ているとヘッドセットを外した後に疲れる。より高画質だったり動きの追随性が高いと疲れにくいのかも気になる。

VR動画が楽しめる「Google Spotlight Stories」。その中にある「HELP」は「ワイルド・スピード」シリーズや「スター・トレック BEYOND」のジャスティン・リンが監督している。

ジャスティン・リン監督作の「HELP」。突如飛来してきた隕石の中にいた怪物がその場にいた人を追い回す。どんどん巨大化していく怪物が「シン・ゴジラ」っぽい。
YouTubeで「VR 360」と検索すると360°動画が見つかる。スマホのYouTubeアプリで再生するとCardboardアイコンが表示されるのでヘッドセットでVR動画が楽しめる。
ハイエンドAndroidスマートフォンが羨ましくなってくる…
ハイエンドの大画面AndroidスマートフォンはフルHDやより精細な解像度を持つものが多い。今まではiPhoneの解像度で十分綺麗だし、これ以上精細になっても違いが感じられるのか?バッテリーを無駄に消費するだけではないのか?と疑問に思っていたけれど、VRを楽しむときの満足度に大きな差が出る。
1,000円のヘッドセットでも思っていたよりちゃんと楽しめてしまうものだから、Galaxyに専用のGear VRが用意されているのは羨ましい(Gear VRにはヘッドセット側面に簡単なコントローラーが備わるから、操作の度にスマートフォンを外す必要がない)。視界がより広く、ドットが気にならなくなるというのならさぞ満足度は高いだろう。
AppleはVRよりもポケモンGOのようなARに注力しているようだけど、Apple版Gear VRは出さないのだろうか?Retinaディスプレイのドットが表出してしまうことに満足していないからだろうか?だとしたら将来のiPhoneでさらに解像度が向上する…?
「もう一声!」という点はあるもの、いきなり10万円を用意しなくても、スマホを持っていればプラス1,000円ちょっとでVRの世界を体験できる。PS VRを買う前のお試しにもいいかもしれない。気になる人はお試しあれ。
あ、そうそう、快適なVR体験には回転椅子も用意したい。シューティングゲームをするのに立ったままくるくる回るのは結構疲れる(笑)。